大人釣りキャンプ その8.
耳に入ってくるのは、水が落ちていく音だけ。
やさしい苔の匂い。
マイナスイオンたっぷりの霧に包まれる、魚止めの滝。
さあ、滝壺で大物ゲット!
…とは、残念ながらならなかったものの、大きな深呼吸を何度もしたくなるような気持ちいい空気を吸い込むだけで、ここに来てよかったなと思わせる滝だ。
ほとんど人の入らないこの沢の、さらに奥…ま、いわば、秘境やね。。。
ふかふかの苔の絨毯が敷かれた大きな岩の上に座り、持ってきたアクエリアスを飲む。
凍らせて持ってきたボトルだが、昼を大分過ぎた今は、氷がとけてシャリシャリと細かい粒子になり、気持ちいいシェイクになっている。
こういう場所に来たら、のんびりと、ありのままを体感するのがいい。
釣りをしているからこそ来ることのできる場所だけど、別に釣らなくなっていいのさ。
…なーんて考えてるのは私だけで、Mちゃんはもう何十分も竿を振りつづけているし、Yちゃんなんか、「どうやらここは釣れないらしい」と悟ると、1人で沢を降りはじめ、もと来たポイントを貪欲に攻めなおしている。
あはーん。いいねぇ、そのノリ!
もう、ハマリだしちゃってるでしょ。
ってか、ドンはまりっしょ!!
っとー、そんな夢中なYちゃん、Mちゃんを見ると、ムズムズと私のSっ気が…。
「さ、そろそろ、沢降りるよー。テン場戻って、バーベキューだし」
「え…もうちょっと…やりません?」
顔は真顔。心はニヤニヤ。そーやろそーやろ。もっと、釣りたいんやろ。しかしだ。
「何言っとんじゃー。これから歩いて戻ってあの階段登るんやで。もう3時過ぎとるし、ダンナもダンナで、ほんまにちゃんとテント張って準備しとるかなんて分からんやろ。あいっつ、1本ビール開けたら、アウトやからなっ! もし、すっかりデキ上がってクルマで寝てたりしたら、こっから帰って暗くなるまえに準備せなあかんのや。早よ帰るで」
「エエ~~? じゃ、ここだけ、ここだけ」
3匹あげたYちゃん、釣り足りない気満々でブーブー言いながら、粘ろうとする。
予定時間はすでに30分オーバーだ。Mちゃんなんか、いまだに滝壺で大物狙ってる。
そうね、遊びは、ちょっと物足りないくらいのほうが、次「またやりたい!」気持ちが高揚するもんである。
ふふふ。
こうして、「釣り仲間増やそうぜ大作戦」に見事ハマってくれたおふたり。
本当にお疲れ様。
さ、例の階段登ってさ、おいしくビールいただいちゃおうぜ!
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