大人釣りキャンプ その5.
釣り上がりながら2時間ほども粘ったけど、ただ歩いて下るには15分とかからない。澄んだ流れをザブザブと戻り、次の沢を目指す。
「えーっと。『立ち入り禁止』って書いてますね」
「『失礼しまーす』って、断っとけば?」
山奥の水力発電施設の、背丈より50センチは高い鉄格子のゲートを、
「マタ痛て~」
とかいいながら乗り越えていく。立ち入り禁止っていうのは、自己責任で気をつけなさいって意味じゃない?
オニヤンマが超絶スピードで顔をかすめていく。
高い青空に、刷毛で薄く塗ったような雲。
弟くんが、黒くすっかり熟れた桑の実を見つけて、みんなに差し出す。
秋は確実に近づいている。
深緑に縁取られた管理道路を30分も歩いていくと、小さな橋にたどり着いた。
「到着! さて、先にお昼にしよっか」
ウェーダーを履いて歩くと、けっこう中はサウナスーツばりに汗ばんでいる。昔、ダンナちゃんに、「家でウェーダー履いてれば、足細くなんじゃね?」とか言われたもんです。ウェーダーを膝まで下ろすと、一瞬涼しくて気持ちよかったけど、だんだん汗冷えしてきて、ウェーダーを履きなおした。
ガスで湯を沸かし、コンビニで買ってきたカップラーメンとおにぎりでパパッと昼ごはん。この日の一品は「カップヌードル チリトマト&シーフードさらにトマト」という、奇跡のコラボ麺だ。
みんなでアスファルトに座り、カップラーメンをすする。
「ところで、沢ってどこですか?」
とあたりを見渡すYちゃん。
「あの橋の下。脇から入るから」
「入るところ、ないですけど」
入るところがないというのは、山歩きをする人の感覚かもしれない。登山では、ルートをはずしたら「迷子」を意味するし、基本的に、道なき道というのはありえない。だけど釣りでは、その川をたどっている限り迷子にはならないし、次の一歩をどう踏み出すかは、自分の判断にゆだねられる。
「あの笹を入っていくよ。頭にダニが入るといけないから、帽子被って」
弟くんは、頭にタオルを巻いて、ダニ対策。
「どっちから入る?」
と、弟くんと少し打ち合わせ。川に近いほうはあまりにも茂みが濃いので、少し離れたところから入ることにした。少し急な斜面に、まるで来るものを拒むように生える笹やぶを、釣り用のグローブで引っつかんでガサガサと登っていく。今、道路を歩いている人がいたら、熊かと身構えてしまうかもしれない。
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