大人釣りキャンプ その6.
せせらぎが近いことでその存在を感じるが、歩いていく人にとっては、見過ごしてしまうような小さな沢。緑が濃く、水量が減るこの季節は、流れそのものが林道からは見えにくく、「まさか、こんな沢で釣りになるなんて」と疑ってしまいたくなるような、そんな沢。
苔むした巨岩やブナの倒木を乗り越えながら、急な流れの落ち込み一つひとつを丁寧に狙っていくと、必ず、潜んでいる。それも、意外なサイズが出る。
こちらの気配を勘付かれないよう、そうっと流れに近づき、竿を出すようにアドバイスする。
私はまだ竿を出さずに、後ろから、あそこらへん、ここらへんとポイントを指差す。
糸の扱いに慣れないうちは、狙ったポイントに針を落としてやることさえ難しい。
そう、慎重に………ほら、もうかかった!
短めの竿の先がきゅきゅんとしなり、水面下の妖精の動揺をつぶさに教えてくれる。
「ゆっくり、ゆっくりね…」
Yちゃんの、初の獲物。20センチはあるかな。腹がすっかりオレンジに色づいて、婚姻の季節が近いことをあらわしている。型のいい岩魚ちゃん。キレイだ。
「やったぜ、釣れたね!」
「やりましたよとらじろうさん!!」
どれどれ、と岩魚の口をあけてみると、エサにしたぶどう虫のほかに、大きなアリを喰っている。
「ほれ」
「うわ~、なんか、野生を感じますね」
針をはずして、川の水で流しながらナイフで腹をさばく。川魚はすぐにさばかないと、臭みが出る。
「どれ、エサ、つけてあげようか」
「いえ、大丈夫です。自分でやってみます」
なんと! 朝はエサ箱のぶどう虫にラジオ体操よろしく拒絶反応していたYちゃんが、自分でエサをつけるという。
「うわー! プニるー! なんで1回で刺さらないんでしょうねコイツ」
な? マカロニと一緒だべ?
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